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相続税の申告の現状は?

相続税の申告の現状は?

昨年末、平成26年度の税制改正大綱が閣議決定されました。この税制改正大綱は、いわゆる税制改正「案」で、まだ正式に法律として成立したものではありませんが、今後の税制の行方を知る上での大切な情報源です。そして同じ時期、国税庁から「平成24年分の相続税の申告の状況について」が発表されました。今回は、実際の相続税の申告の現状がどうなっているのかを見ていきます。

「平成24年分の相続税の申告の状況について」

実際の相続税の申告の現状は?

平成25年12月、国税庁より「平成24年分の相続税の申告の状況について」が発表されました。これは、平成24年中に亡くなった人(被相続人)、から相続や遺贈により財産を取得した人の申告データを基に算出されたものであり、実際に行われた相続税の申告の現状を知ることができます。データのうち、①課税割合、②課税価格、③相続税額、④相続財産の金額構成については以下のとおりです。国税庁(全体)の他、地域別データとして東京・大阪・名古屋をピックアップしました。

平成24年分の相続税の申告の状況

(※1)①課税割合
課税割合とは、全被相続人のうち、相続税を申告(相続税額あり)した被相続人の割合
(※2)②課税価格
課税価格とは、相続財産の価額から被相続人の債務・葬式費用を控除し、被相続人からの相続開始前3年以内生前贈与財産及び相続時精算課税の適用を受けた財産を加算した金額

課税割合は平成27年から増加へ

まず、「①課税割合」を見ていきます。国税庁の課税割合は、4.2%(平成23年分4.1%)。東京、大阪、名古屋でも、平成23年分と比較して「ほぼ横ばい」状態です。東京の場合、相続税を納める相続人は約4万人(全体の33.3%)で課税割合は7%(全体の約1.7倍)と、相続税の負担がかなり高くなっています。平成27年からの相続税の基礎控除の引き下げにより、この課税割合が、現在の4.2%から6~8%(都市部では10%超、東京23区内では25%程度)にアップするのでは、という試算も出されているようです。

相続財産は土地がトップ

次に、「④相続財産の金額構成比」です。相続財産は「土地」が最も多く、次いで「現金・預貯金」「有価証券」の順。土地の割合は高く、東京・名古屋では約50%を占めています。「今後、都心部で戸建てがあれば相続税がかかる」といわれるように、土地の値段が高い地域ほど、相続税負担への影響が大であるといえます。

このように、多くの相続において、相続財産の大部分は「土地」です。このため相続税の納税資金が足りず、せっかく相続した土地を売却して相続税を支払わなければならないこともあります。そこで、相続した土地の譲渡については、優遇制度「相続税が取得費に加算される特例」が設けられていますが、今回の税制改正大綱では、この制度に対する改正案が出されました。

「相続税が取得費に加算される特例」

相続した土地を譲渡したら?

土地を譲渡すると、その譲渡益に対して譲渡所得=所得税(復興特別所得税・住民税を含む)が課税されます。これは相続した土地も同様です。このため、相続税の納税資金として、相続後間もないうちに相続財産を譲渡すると、相続税だけでなく所得税も負担しなければなりません。これでは相続税の支払いが困難になることもあるため、税負担の軽減策として、「相続税が取得費に加算される特例」制度が設けられています。

譲渡所得の計算

譲渡所得は次のように計算されます。
「譲渡所得=売却金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除」
取得費は、一般に購入代金のことで、購入手数料なども含まれます。譲渡費用は、仲介手数料等のように売却するための費用、特別控除は、一定の条件を満たした場合に控除することができるものです。
(例)30年前に3,000万円で購入した土地を6,000万円で売却(譲渡費用200万円)
譲渡所得6,000万円-(3,000万円+200万円)=2,800万円、税金2,800万円×20.315%(所得税+復興特別所得税+住民税)=約570万円(特別控除はないものとして計算)。

「相続税が取得費に加算される特例」とは?

この特例は、相続財産の土地や株式等を、相続開始の日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年以内に譲渡した場合、相続税のうち一定の金額を、譲渡所得を計算する時の「取得費に加算」することができる制度です。つまり譲渡益から差し引く金額が多くなるため、この分税負担が軽くなります。この特例では、譲渡した相続財産が土地か土地以外かで、取得費に加算できる金額が違います。
①土地の場合:相続税のうち、相続や遺贈で取得したすべての土地に対応する額
②土地以外(建物や株式等)の場合:相続税のうち、譲渡した建物や株式等に対応する額

(例)親が30年前に3,000万円で購入したA土地を、相続人の子が6,000万円で売却(譲渡費用200万円)
譲渡所得は6,000万円-(3,000万円+取得費加算額+200万円)。親の相続財産を1億円(A土地5,000万円・B土地4,000万円・株式1,000万円)、子の相続税を1,200万円とすると、①土地の場合:取得費加算額=相続税1,200万円×(A土地5,000万円+B土地4,000万円)÷1億円=1,080万円、税金は約350万円。改正案では②と同様となり、取得費加算額=相続税1,200万円×A土地5,000万円÷1億円=600万円で、税金は約450万円となるため税負担が重くなります。

①土地の場合には、譲渡した土地の相続税だけではなく、相続や遺贈で取得したすべての土地分の相続税を取得費に加算することができます。一方、②土地以外(建物や株式等)の場合、加算できるのは譲渡した財産分の相続税だけです。土地を譲渡した場合には、実際に譲渡していない土地の相続税も取得費に加算することができるため、税負担がより優遇されています。この制度ができた当初は①②の区別はなく、バブルによる地価高騰と譲渡益への税率アップで所得税の負担が著しく増大したため、平成5年に改正されたものです。しかし、現状では過大な優遇と会計検査院からも指摘を受け、今回の税制改正大綱で、土地についても土地以外と同様にする改正案が出されました。

親の「家」をどうするか?

今回土地に焦点を当てて見てきましたが、老後~介護~相続と、それぞれのタイミングで親の「家」のことを考える時期があります。親がずっと住み慣れた家。とはいえ、そのまま住み続けるとしても、体の状態によっては暮らしにくいことがあります。通常のメンテナンスだけでなく、バリアフリーのためのリフォームも必要になるでしょう。あるいは、子との同居、二世帯住宅の建築、買換え、有料ホームへの入居ということも…。相続問題でも、親が「家を誰に相続させようか?」というお悩みは多いのですが、実際に相続がはじまると、税金や争いのためにやむなく「家」を手放すこともあります。いざ、というときにあわてないように、親子で上手に話し合っておけるといいですね。

中島典子

中島 典子 (なかじま のりこ)

ファイナンシャル・プランナー、税理士、社会保険労務士、相続診断士 CFPR認定者・1級ファイナンシャル・プランニング技能士

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