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相続税はどう変わる?

相続税はどう変わる?

「うちも生前贈与しないと、だめでしょうか。」

こうしたお問い合わせが急増しているようです。

相続税・贈与税の改正が決まったことで、以前よりも相続や生前贈与への関心が高まっています。では、一体相続税はどのように変わるのでしょうか。

相続税の変更点

相続税の主な変更点は、次のとおりです。

1.相続税の基礎控除の引下げ(現在の6割へ引下げ)
2.税率のアップ(最高税率55%へアップ)
3.小規模宅地等の特例の拡大(面積のアップや範囲の拡大)
4.未成年者控除・障害者控除の拡大(年間控除額のアップ)

では、それぞれの内容を見ていきます。

1.相続税の基礎控除の引下げ

相続税の基礎控除とは、相続税を計算する際に相続財産から控除することができる金額です。これが現在の6割に引下げられます。なお、相続財産が基礎控除額以下なら相続税はかかりません。
・平成26年まで:「5,000万円+1,000万円×法定相続人数」

・平成27年から:「3,000万円+ 600万円×法定相続人数」

法定相続人が親と子2人の場合、平成26年までの基礎控除額は8,000万円、平成27年からは4,800万円となります。

2.税率のアップ

平成27年より、相続税の税率がアップされ、最高税率が55%になります。2億円超3億円以下の税率が40%から45%へ、6億円超の最高税率が50%から55%へ引上げられるため、富裕層の相続税負担が重くなります。

3.小規模宅地等の特例の拡大

小規模宅地等の特例とは、親が亡くなった場合、その親の自宅や事業に使用していた土地について一定の条件を満たした場合には、その土地の評価額が最高で8割引になるものです。例えば自宅は8割引の対象になりますが、仮に自宅の土地(240㎡)が1億円の場合、相続税がかかる金額は2,000万円(=1億円-1億円×80%)となるため、かなりの節税効果が期待できます。この特例では、親の所有する土地について、自宅は「居住用」、事業用の店舗などは「事業用」、賃貸アパートや駐車場については「貸付用」というように分けて考えます。

①居住用の対象面積の引上げ
自宅の土地については、現在240㎡ですが、平成27年からは330㎡に拡大されます。

②居住用と事業用との併用
居住用と事業用の両方を選択する場合には、それぞれの面積(居住用240㎡・事業用400㎡で最大400㎡)のうち一定の面積までしか適用できません。平成27年からは、選択する土地のすべてが居住用か事業用である場合には、それぞれの面積(居住用330㎡・事業用400㎡で、最大730㎡)まで適用できます。

③自宅の範囲の拡大
・二世帯住宅の場合
一棟の二世帯住宅で、親と子が建物内で行き来のできない独立したスペースに居住している場合には、原則として親の居住部分のみが適用できます。平成26年からは、親の居住部分だけでなく、子の居住部分にも適用が拡大されます。
・老人ホーム入居の緩和
終身利用権を取得して老人ホームに入居している場合には、親の自宅は老人ホームとされるため、空き家となっている自宅には適用できません。平成26年からは、たとえ終身利用権を取得していても、「介護が必要なために入所したこと」および「自宅を賃貸など別の用途に使っていないこと」の条件を満たしていれば、適用できます。

4.未成年者控除・障害者控除の拡大

①未成年者控除
相続人が未成年者の場合には、「6万円×20歳になるまでの年数」を未成年控除として相続税から控除することができます。平成27年からは、「10万円×20歳になるまでの年数」にアップします。

②障害者控除
相続人が障害者の場合には、「6万円(特別障害者は12万円)×85歳になるまでの年数」を障害者控除として相続税から控除することができます。平成27年からは、「10万円(特別障害者は20万円)×85歳になるまでの年数」にアップします。

では、今回の改正で、親の相続にどのような影響があるのでしょうか?
例として、相続人が配偶者と子2人のケースで見ていきます。

・配偶者と子の相続(一次相続)の場合
法定相続人が配偶者と子2人の場合、現在8,000万円ある基礎控除額が4,800万円まで下がります。減少額は3,200万円。例えば、1億円の相続財産を法定相続分で相続した場合には約200万円、相続財産3億円なら約560万円の相続税負担が増加することになります。なお配偶者には「配偶者の税額軽減」の特例があります。この特例は、配偶者の相続した財産が1億6,000万円または法定相続分(この例では1/2)とのいずれか多い金額までなら配偶者に相続税がかからないものです。しかし、この特例で配偶者の相続税がゼロになったとしても、基礎控除の引下げによって、子の相続税はアップすることになります。また、相続財産が基礎控除額以下なら相続税の申告は必要ありませんが、「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」を受ける場合には、申告が必要です。

一次相続では、配偶者の相続分と取得する財産についても注意が必要です。
「配偶者の税額軽減」があるからといって、配偶者の相続分をあまり多くしてしまうと、二次相続の税負担が増加する場合があります。また、配偶者がどの財産を相続するか(土地か金融資産かなど)によっても、二次相続の税負担が増加したり、遺産分割がしにくくなるということがあります。

・子だけの相続(二次相続)の場合
法定相続人が子の2人だけになると、現在の基礎控除額7,000万円が4,200万円になり
ます。減少額は2,800万円。仮に、1億円の相続財産を法定相続分で相続した場合には約400万円、相続財産3億円なら約1,100万円の相続税負担が増加します。

今まで見てきましたように、基礎控除、配偶者の税額軽減、小規模宅地等の特例3つが使えるかどうかで、負担する相続税が大きく変わってきます。特に、二次相続の場合、一次相続に比べて基礎控除額が減少するだけでなく、配偶者の税額軽減もないため、小規模宅地等の特例が適用できるかどうかが大きなポイントとなります。

今回の改正では、相続税だけなく贈与税も変更されました。
主な変更点は、贈与税の税率、相続時精算課税、子や孫等への教育資金の一括贈与の非課税などですが、子や孫への贈与に対する優遇策の拡大が目立ちます。

相続時精算課税については、贈与者の年齢要件が65歳から60歳へ引下げられるほか、
「親から子へ」だけでなく「祖父母から孫へ」、いわゆる孫への世代越えが可能になります。すぐにでも相続財産を減らしたい場合には、「相続時精算課税」や「子や孫等への教育資金の一括贈与」といった生前贈与が選択肢の一つになりますが、どちらも高額な贈与になる場合が多いので、事前によく検討されることをおすすめします。

このように、子や孫への生前贈与に対する優遇策は拡大傾向にあります。しかし、いくら税金がかからずに子や孫に財産を移せるからといって、生前贈与で財産を減らしすぎてしまえば老後の生活に支障が出ることもあります。この点には配慮が必要です。

今回の相続税の改正によって、都心部では、財産が自宅だけでも相続税がかかる可能性が出てきました。しかし、実際の相続で起こる問題は、税金のことだけではありません。「いかに円満に相続できるか」ということもその一つです。

相続では、損得、環境、感情等が複雑に絡み合ってきます。特に子だけの二次相続になると、争いが起こりやすくなります。やっと相続が終わったものの、残された家族に感情のしこりが残ったり、疎遠になってしまった例は多々あります。こうしたトラブルをできるだけ少なくするためにも、できるだけ事前の対策を考えましょう。

中島典子

中島 典子 (なかじま のりこ)

ファイナンシャル・プランナー、税理士、社会保険労務士、相続診断士 CFPR認定者・1級ファイナンシャル・プランニング技能士

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