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成年後見制度に関する法律の施行とこれから

成年後見制度に関する法律の施行とこれから

介護保険とともに2000年に始まった成年後見制度。しかし、介護保険ほど知られていないのが実情です。

そこで、成年後見制度の問題点を解決し利用を促進するために、「成年後見制度の利用の促進に関する法律(成年後見制度利用促進法)」が、今年4月に成立し、5月から施行されました。

また、成年後見人の事務について、「成年後見の事務の円滑化を図るための民法および家事事件手続法の一部を改正する法律」も4月に成立し、10月に施行されますので解説します。

成年後見制度とは

成年後見制度とは、病気や障害などにより、物事を判断する能力が衰えた方の財産管理や日常生活について家庭裁判所がご本人を支える人を選び、ご本人を保護・援助していく制度です。

成年後見制度の種類については、2つあります。すでに判断能力が低下した方が利用する「法定後見制度」と、判断能力があるときに、将来判断能力が低下したときに備えて、支えてくれる人を決めておく「任意後見制度」です。そして、「法定後見制度」では、ご本人の判断能力の程度によって、「後見」「保佐」「補助」の3つに分けられ、各々、支える人を「成年後見人」「保佐人」「補助人」といいます。

成年後見人・保佐人・補助人の役割について

役割は、財産管理と身上監護の2つです。

財産管理とは、銀行などの金融機関からお金の出し入れをしたり、税金などの支払い、不動産などの財産の管理・保存・処分、行政上の手続きや遺産の分割協議にご本人の代わりに参加したりします。

身上監護は、病院への費用の支払いや入院の手続き、ご本人に必要な介護サービスのために事業者と契約をしたり、老人ホームなどへの施設の入居契約をご本人に代わって行います。また、認知症のため悪徳事業者に騙されて契約をしてしまった場合に、その契約を取り消してご本人の利益を守ることも役目の1つです。

この財産管理と身上監護の内容は、ご本人の判断能力の程度によって異なります。

「成年後見制度促進法」が施行されて、どこが変わるのか

今年5月から施行されていますが、実際には、すぐに何かが変わるということはありません。

というのは、成年後見制度利用促進法では、内閣総理大臣を会長とする成年後見制度利用促進会議や有識者で組織される成年後見制度利用促進専門家会議などで、各々、成年後見制度の利用促進について議論をして、基本計画を策定していきます。その方向性が示されているだけなので、具体的にいつまでにこれをやりますというものが、まだありません。

ただ、基本方針として、地域において成年後見人等になる人(市民後見人)の育成についての支援の充実や成年後見人等の事務の監督などを強化するための整備などを行うこと、判断能力が低下してきた方が不当に差別されないようにするための制度の見直しなどを盛り込んでいますので、これからどのような形になっていくのか、アンテナを張っておきたいところです。

「成年後見の事務の円滑化を図るための民法および家事事件手続法の一部を改正する法律」

民法の一部と成年後見制度を使うときの手続きの法律(家事事件手続法)が一部改正され、10月13日から施行されます。

まず、民法で改正されたところは、2つ。郵便物に関することとご本人が亡くなった後の事務についてです。

(1)郵便物について

成年後見人が家庭裁判所に請求をして、家庭裁判所が必要と認めたときは、支えている人あての郵便物を成年後見人あてに配送してもらうことができるようになりました(ただし、6か月を超えない範囲)

(2)成年後見人として支えてきた方が亡くなった後の事務について

以下の3つのことが法律に定められました。

① 相続財産に属する特定の財産の保存に必要な行為

② 相続財産に属する債務(弁済期が到来しているものに限定)の弁済

③ 亡くなった方の死体の火葬、または、埋葬に関する契約の締結と、①②以外の相続財産の保存に必要な行為(③を行うには事前に家庭裁判所の許可が必要)

気をつけたいのは、今回改正された民法は、「後見」「保佐」「補助」の3種類のうちの「後見」のみです。つまり、判断能力が低下した人が、家庭裁判所で「後見」と判断されたときにご本人を支える人(成年後見人)のみの事務について法律で明文化されただけなのです。「保佐」「補助」の方を支える「保佐人」「補助人」にはあてはまらないものになります。

家事事件手続法については、民法が改正になったことで、一部改正されました。細かいことが多いため、今回は省略します。

私たちがこれから注意、気を付けることは何か

10月から施行される民法の一部改正は、すぐに成年後見人の役目に影響を及ぼします。法律の改正前は、成年後見人としての役目は、支えてきた方が亡くなると終了します。しかし、現実は、相続人がいても亡くなったあとのことについて成年後見人として支えてきた人がかかわることがありました。改正後は民法を根拠として、死後事務ができるようになります。

ただし、法律には、以下のように書かれています。

「成年後見人は、成年被後見人が死亡した場合において、必要があるときは、成年被後見人の相続人の意志に反することが明らかなときを除き、相続人が相続財産を管理することができるに至るまで、次に掲げる行為をすることができる。」(民法第873条の2の前段)

相続人がいて、その方々が火葬、納骨、遺品整理などを行う場合は、成年後見人は安心して、事務を終えることができますが、相続人が亡くなった方とかかわりたくないケースがあります。また、死後のことについて行ってくれる身内がいないケースもあります。

成年後見人として支えてきた方の死後のかかわりについて、法律に明文化され、相続人の意志に反しないと合意を得て、死後の財産の保管などを行ったときでも、実際に動いていく中で、新たな不都合などが見つかる可能性があります。

今後、成年後見制度について、民法改正後の現場の声や成年後見制度促進法の議論の内容や基本計画などが、新聞などで発表・報道されると思いますので、注意深く見守っていく必要があるでしょう。

ファイナンシャル・プランナー 佐川京子

佐川 京子(さがわ きょうこ)

佐川京子行政書士事務所 代表
行政書士、ファイナンシャルプランナー
終活アドバイザー、福祉住環境コーディネーター

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