親の介護・相続と自分の老後に備える.com

ガン治療の陽子線治療設備の見学会に参加して

メットライフ生命(株)は先進医療の保険金の直接支払などを通じて、筑波大学と関係をもっています。また筑波大学は小児ガンの治療に力を入れており、小さな子供に怖がらずに治療を受けてもらう方法を探していました。そこで、無機質な治療室をメットライフのキャラクターのスヌーピーで飾ることを提案して、2つある照射室のうちの1つをスヌーピーで飾ることになりました。11月末に完成して、そのお披露目会として治療室の見学ツアーと施設の写真撮影を行ことになり、参加することができました。
また、陽電子線治療についても説明を受けてきました。

陽子線治療とは

陽子線と重粒子線は加速したイオンを照射して、体の中で止まったところにあるがん細胞を死滅させるものです。表面のダメージを少なくしながら狙ったところにだけ効果を集中できるという特徴があります。

陽子線は陽子(水素原子から電子をはぎ取ったもの)を加速して、患者のガン組織に照射して、がん細胞を死滅させます。広い範囲を照射するのに向いています。一方、重粒子線は炭素イオンを使いますが、イオンの性質上、小さい部分の照射でき、細胞を死滅させる能力は高いですが、正常な細胞も同時に殺すという欠点があります。陽子線はこの特徴を利用して、分割照射という方法で、正常細胞をできるだけ残し、がん細胞だけを殺すことができます。

何回にも分けて照射するため、患者への負担は減り、Quality of Lifeは向上します。設備を使える患者さんの数は減るといった欠点もあります。

陽子線発生部分の見学

まず驚いたのは分厚い扉です。陽子線を発生させる時に、わずかに中性子がでてくるため、部屋全体を75cmのコンクリートで覆っています。扉も同じ構造でそれが引きだされる様子は、SFの世界のようです。

部屋に入っての印象は赤や青、黄色に塗られた塊をステンレスのパイプが貫いていてレゴで作ったようにも見えます。色分けされたものは磁石で、色によって、ビームを曲げたり、平行性を保ったり、形を整えたりするといった目的に使われています。

水素ガスから陽子を作り、直線加速器(ライナック)と円形加速器(サイクロトロン)で光の速ささの60%まで加速します。予算の関係でライナックの部分は海外のものを使ったのですが、ここは故障率が高いと嘆いておられました。筑波大学では30年前から陽子線の研究をしており、本装置は2号機とのことでした。

治療室は左右2つあり、一方は従来の白一色で大人でも入るとちょっと怖いイメージがありました。他方は壁にスヌーピーのキャラクターが治療に向かうように描かれていて、床には、スヌーピーの足跡がつけられていて、足跡をたどっていくとベッドにたどり着きます。ベッドの向きを変える装置は飛行船をイメージして色が塗られ、キャラクターが描かれていました。

治療室と治療

加速された陽子は治療室の裏ある直径10m大きな装置(ガントリー)で患者さんにどの方向からも照射できるように角度を変えます。1号機では、角度が変えられなくて患者さんの姿勢を変えていたため、臓器の位置と変形を調べるためにCTを取り直す必要があり、患者さんの被ばく量も大きかったとのことです。一方、治療室のベッドも水平方向に角度を調整する装置がついており、患者さんのすべての方向から治療ができます。

治療はまず、ガンかどうかを特定するため、通常の検査がなされます。ガンの種類によって、陽子線治療が向いているのかを確認します。通常の放射線治療がむいているものには適用しません。

その後、CTで臓器やがんの位置を計測して、陽子をがんの大きさに合わせて照射するための治具が作られます。また患者さんの体を固定するための治具も作られます。頭部の治具には仮面のような治具が使われます。子供さんに喜んでもらえるように、いろいろな色が塗られたものもありました。

患者さんは装置の上で30分じっとしていればよいのですが、子供の場合はじっとできるかどうかで麻酔を使うかどうかを判断するようです。麻酔はリスクがあるため、できるだけ使わないようにするとのことでした。分割照射は毎日行われ、1週間程度で終わります。状況により入院するか決められます。治療は0歳から90歳以上の患者さんに使えるとのことでした。費用は大人は250万円かかります。

まだ、医者の間でも認知度が低いため、病院のHPから用紙をダウンロードして送れば治療できる可能性があるか判断してもらえるとのことでした。最先端の医師がこのような事務作業までやっていると聞いて、正直、違和感も感じました。

日本での現状

現状、10か所の陽子線設備が立ち上がっています。欧州10か所、米国でも20か所程度なので、極端に多いですね。一方で、通常の放射線(X線)治療施設が広がらないため、必要もないのに高額の医療をすることになってしまいます。また、放射線科の医者が育たないとこのような設備をつかいこなせなくなるといった問題もあります。

放射線科の医者に対するイメージを良く思っていないお医者さんも多く、弟子を放射線科に行かせないといった要因もあるようだと言っておられました。新興国でも陽子線治療施設をつくりたいとの要望は強いのですが、放射線科が育っていない国では使いこなせないとのことでした。

施設を見学を終えて

素晴らしい施設とそれを支える人や努力、お医者さんの患者さん側に立った治療には頭が下がる思いでした。医療設備も機能だけでなく、デザイナーが入って、治療を受ける患者さんに親しみが持てるものになっていけば良いと思いました。


サイクロトロン部(陽子を加速します)


(左)ライナック部分(陽子の第1弾加速の部分です)
(右)ガントリー部(陽子線の照射方向を変えます)


従来の治療室(壁の絵だけが癒しになっています)


治療室2スヌーピーの塗装をしています

ファイナンシャル・プランナー 上本勉

上本 勉(うえもと つとむ)

ファイナンシャルプランナー(CFP)、フリーFP、 通信費アドバイザー

前職はエンジニア。2008年退職後、FPとして、リタイア後の生きがいと安心をテーマに活動中。

詳細はこちら