親の介護・相続と自分の老後に備える.com

もしもの時に財産をまもる家族信託を知っていますか?

もしもの時に財産をまもる家族信託を知っていますか?

 4月1日から、直系尊属からの教育資金の贈与を信託とする場合、贈与税が非課税になる法律がスタートしました。ポイントは平成27年12月25日までの期間に1500万円(学費以外は500万円)までを信託で贈与すること、教育費に限られること(証明する書類を銀行に提出すること)、もらえる方は30歳未満で、30歳になって使いきれなかったら贈与税がかかることです。新聞では、祖父母からの贈与が非課税になったと書かれていますが、ご両親からでも使えます。また、この制度を使わなくても、ご両親に負担能力がない場合に、お孫さんの教育費をその都度負担してあげることは非課税です。使ったほうが得なのかは良く考えたほうがよさそうです。
さて、この制度でも使われている信託とは何でしょうか?

信託制度とは

信託は広く使われている制度で、例としては多くの人に出資してもらい信託契約のもとで投資につかわれているのが投資信託です。企業などで使われる信託に対し、家族間の信託を家族信託と言います。もともとは、英語のFamily Trustを翻訳した言葉ですが、法律用語ではありません。認知や活動の能力が落ちた時に財産を守る、家族の誰かに財産を譲る時などに使います。

信託の仕組みは財産を誰かに託して(移転して)、誰かのために使う様に、管理・処分してもらう仕組みです。財産があり信託しようとする人(委託者)と、財産を管理・処分を行う人(受託者)とそこから給付を受ける人(受益者)の3者からなります。委託者と受益者は同一人でも(自益信託)、別人でも(他益信託)設定することができます。

信託する財産としては、金銭、土地建物、有価証券(会社)、債権、動産や知的財産権があります。アパートを信託した場合、契約や管理も受託者が行うことになりますので、信託契約に従ってお金を振り込んでもらうことができます。

信託と他の制度との違いは?

財産を他人に管理してもらう方法には委任(代理人)もありますが、財産を移管していないので、代理人を無視して契約をすることも可能です。これは、もし、自分が悪徳業者や詐欺にかかった時や、破産をした時は財産を守れないことを意味します。これに対し、信託財産は受託人に移管されているため、このような場合も業者は手をだすことができません。

財産を渡す基本は相続や贈与ですが、民法と相続税法に財産を渡すルールや税金について決められているだけで、渡したらその人がどのように使おうと自由です。生前は自分のために使うとか、定時定額などの渡し方を決めるとか、次の継承者などの渡し方を決めることはできません。

信託と相続・贈与の関係は?

このように、信託は自由に財産の渡し方や相手を決めることができますが、相続関係の法のもとでの信託ですから、生前に贈与すると贈与税、死後には相続税がかかるのはもちろん、法定相続分の2分の1は遺留分として法定相続人の権利です。また、信託で他人を受益者にした場合、信託が設定された時点で贈与税がかかることも注意しなければなりません。ただし、例外措置があり、先に述べた教育資金の一括贈与(1500万円まで)や特別障害者への一括贈与(6000万円まで)、離婚時の未成年者の養育費の一括贈与の信託には贈与税はかかりません。養育費だけは法律の条文ではなく通達で認められているため、事前に税務署との調整が必要など注意すべき点があります。

高齢期に使う家族信託

ここで信託を高齢になった時に使い、有効な場面と注意点について考えましょう。有効な場合は大きくは2つあります。第1は、自分が高齢になり、認知能力や体力に不安を感じた時に財産を守ること、第2には、自分の財産を継承するときです。

自分自身の高齢期に使う時は、財産を移管して、毎月一定額を特定の口座に振り込んでもらうということになりますが、どこで生活するのか、後見人をどうするのかなどで信託契約の内容は変わります。老人ホームで暮らす場合、自分の使う費用、老人ホームの費用をどの口座に振り込むことを考えなければなりません。自宅で、後見人をお願いする場合でも、財産の管理まで行ってもらうと、負担が大きくなるだけでなく、意図する、しないに関わらず使われ方の問題が発生する場合があります。後見人の報酬と生活費を分け、しかも、財産を処分するときの同意人を決めておくと将来のトラブルを防げます。

財産の継承につかう場合は、だれに、どういった方法で渡すかということを考える必要があります。お体の不自由であったり、財産の管理能力がなかったり、気をつけなければならない親族がおられる場合や、逆に親族に財産を渡して問題になるより、公益に使いたいなど、ご家族の状況によってさまざまな場合が考えられます。まずは、気になっていることや、しなければならないと思っていることを整理して、可能ならば、ご家族で話し合われることが第一歩です。

家族信託の注意点

どちらの場合も一度信託を設定すると、解約は困難になりますので、しっかりとライフプランをつくり、どこで信託を始めるのかを決めてください。

実際に信託を設定する時に考えなければならないのは、信託銀行のパッケージになった商品を使うのか、オーダーメイドの信託を作るのかということです。後者の場合、信託銀行、信託会社に依頼するのか、ご家族に受託人を依頼するのかも検討しなければなりません。ご家族に依頼する場合は、正しく行われているかをどういった方法で確認するかも決めておかなければなりません。契約は一般の契約でもできますが、公正証書にした方がトラブルを防げますし、公証役場の中には信託に力をいれているところもありますので、相談にのってもらえます。

ただ、信託銀行や公証役場の費用は少なくありませんので、わり切って考えなければなりません。ちなみに、金銭信託の場合、信託銀行の信託報酬は3%:最低105万円から(三井住友信託銀行のホームページより)で、このほかに事務手数料、契約費用、振り込み時の毎年の費用、振り込み手数料などがかかります。費用を減らす程、信託が正しく行われないリスクが増加することも考え、最善の方法を見つけましょう。

信託銀行の商品にはどういうものがあるの?

最後に、パッケージになっている信託商品のいくつかを見ていきましょう。信託の利用場面や、利点、注意点がわかりますので参考にしてください。

1)パーソナル・トラスト(特約付金信託):自己の財産を信託にして、一定期間ごとに一定額を特定口座に振り込むことができます。有料老人ホームに入居した時の毎月の費用は生活費に使えます。

2)後見制度支援信託:自分の老後、認知能力の落ちた時に後見人をつける場合に使います。財産の管理をなくし、後見人の負担と、後見人が財産を自分の意思で処分するリスクを減らせます。 手元に残すお金以外の財産を信託して毎月必要なお金を振り込みむようにします。解約には家庭裁判所の同意が必要です。

3)遺言代用信託:生前に財産を信託しておいて、生前は自分のために使うこともでき、その受益権を死後に相続人に与えるようにした信託。民法の死因贈与契約に相当します。

4)受益者連続信託:受益者を複数設定して、順位付けしておき、第1順次者から受益権を取得します。先順位者が死亡した場合には、次の順位者に受益権が移ります(30年以内)。相続順位を無視して順位は設定できますが、相続税、贈与税、遺留分が順位を移る毎に発生するため、注意しなければなりません。

5)生命保険信託:信託するお金を生命保険で準備します。生命保険と信託が合わさったものと考えられます。保険金の受取人を信託銀行にして、死亡後、信託契約にしたがった給付を行います。生命保険は受取人固有の財産のため、遺留分がありません。信託契約は個々のケースに合わせて設計できます。

6)教育資金贈与信託:直系尊属から(例として、大学生で配偶者のご両親からの贈与は非適用)教育資金を一括贈与する時に使います。25年4月1日より、27年12月25日までの限定措置で30歳未満の孫の教育資金を1500万円(学費以外は500万円以内)まで贈与税は非課税となります。学費の支払いの書類を毎年信託銀行に提出しなければならないこと、30歳までに使いきれない場合残額には贈与税がかかることを注意しましょう。現在、信託商品として出しているものは財産を運用してその利益で、報酬をまかなうというもですが、見えないところで多額の費用を負担していることも自覚しましょう。また、教育費にかかった書類を提出するときの事務費用や他行への振り込み費用などがかかる場合もあります。

2014年8月開催セミナーのDVD販売中。
「高齢期こそインターネット! -親と子はスープの冷めない距離からネットのつながる環境へ-」 詳しくはこちら

ファイナンシャル・プランナー 上本勉

上本 勉(うえもと つとむ)

ファイナンシャルプランナー(CFP)、フリーFP、 通信費アドバイザー

前職はエンジニア。2008年退職後、FPとして、リタイア後の生きがいと安心をテーマに活動中。

詳細はこちら