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おひとりさまの叔母が倒れたら…~成年後見制度や死後事務委任契約活用のすすめ~

おひとりさまの叔母が倒れたら…~成年後見制度や死後事務委任契約活用のすすめ~

突然我が家に起きたおひとりさまの看取り

それはある日、私達夫婦に起こったことです。

一昨年の年末に病院からの連絡があり、かけつけると呼吸器を装着した意識のない叔母、携帯電話の着信履歴で関係者へ連絡したとのことでした。治療方針決定や入院手続きなど早急に決定しなければいけない事柄に遭遇することになったのです。

叔母は独身で7人きょうだいの末っ子、生存しているのは認知症の義母のみで、年末年始に年1回程度挨拶する仲です。叔母の生活状況や人間関係は一切わからず、さあ大変です。

仕事帰りや休日に病院と叔母の家へ通う日々が始まりました。

おひとりさま入院と看取りまでに必要だったこと

本人の意思確認が困難な中、私達が行ったことを挙げると次の通りです。

  • 1. 休暇:病院側の急な呼び出しや役所などの手続きなど職場の理解を得ておく
  • 2. 病院の身元保証人や医療同意(治療方針など)
  • 3. 書類捜索:保険証、通帳、印鑑など病院や各支払いに必要な書類
  • 4. 金銭の確保
  • 5. 各種支払:病院支払い、生活費支払い(家賃や光熱費やその他)
  • 6. 銀行や保険手続き
  • 7. 役所への手続き
  • 8. 親族への連絡:疎遠な家族 甥や姪が沢山いる
  • 9. 死亡後に必要な書類の届け出
  • 10. 友人や知人への連絡
  • 11. 葬儀の手配(お墓など住職や葬儀社との話し合い)
  • 12. 自宅の後片付け
  • 年末年始で各種手続きができず、亡くなるまでお金と時間がなかったので、弁護士相談や生活保護申請、成年後見制度ほかの利用ができず、病院からの急な呼び出しに仕事のスケジュール調整は大変でしたが、夫婦で対応することにしました。

    はじめに病院のソーシャルワーカーへ各種制度利用について相談しました。入院中も複数回相談し、関係各所(役所含め)手続き方法について支援をしていただきました。

    書類を捜しに自宅へ行くと、そこには訪問看護でよく見る光景が。そうゴミ屋敷です。わずかな貯蓄から生活が困窮していたこともわかりました。

    叔母の自宅に入るのは初めてな上にゴミ屋敷。必要書類捜索方法の知恵は、職場のケアマネジャーから高齢者行動様式のアドバイスで無事に発見できました。

    親族情報から、実家と仲が悪く、多数いる甥や姪は高齢でもあり協力が得られませんでした。銀行は本人の意識がなく同意書がもらえない状態であり、弁護士や行政書士などの活用も考えたのですが、叔母の貯蓄もほとんどないため放置することにしました。

    お墓は、実家も世代が変わり「昔縁を切ったと聞いている」と言われ断念。別のお寺と関係していることがわかり住職へ連絡後に面談、葬儀費用や葬儀社も経済的なことを相談し、一部の親族協力もあって解決となりました。状態が悪くなった時に連絡してほしい知人がわからず、死亡通知は年賀状の方へ送ることになりました。

    健康な時に成年後見制度や死後事務委任契約を活用しよう

    このように、自身のエンディングについて決めないことは周囲への負担となります。そうならないためにも、健康な時に成年後見制度や死後事務委任契約を活用してみてはどうでしょうか。

    成年後見制度は別のコラムにありますので、ここでは死後事務委任契約について記載いたします。死後事務委任契約とは、委任者(本人)が第三者(個人、法人を含む)に対し、亡くなった後の諸手続、葬儀、納骨、埋葬に関する事務等についての代理権を付与して、死後事務を委任する契約をいいます。

    この契約は、知人や友人も対象ですが、トラブルを避けるためにも、弁護士、司法書士、行政書士などと契約してはどうでしょうか。それから、エンディングノート作成と家族や第三者にも必ず契約して入ることを伝えてほしいです。

    死後事務委任契約で決めておきたい事務としては、次のようなものが挙げられます。

  • 1. 医療費の支払いに関する事務
  • 2. 家賃・地代・管理費等の支払いと敷金・保証金等の支払いに関する事務
  • 3. 老人ホーム等の施設利用料の支払いと入居一時金等の受領に関する事務
  • 4. 通夜、告別式、火葬、納骨、埋葬に関する事務
  • 5. 菩提寺の選定、墓石建立に関する事務
  • 6. 永代供養に関する事務
  • 7. 相続財産管理人の選任申立手続に関する事務
  • 8. 賃借建物明渡しに関する事務
  • 9. 行政官庁等への諸届け事務
  • 10. 以上の各事務に関する費用の支払い・病院への支払いや契約
  • 叔母の扶養義務について

    今回、一部の親族から、「縁をきった」とか、「私達は一切関係ない」と言われましたが、民法第877条2項では「家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、3親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる」と定めています。

    訪問看護をしていても同じような事態に遭遇します。おひとりさまが資産家だったり逆に負債がある場合は対応が違ったかもしれません。

    叔母はおひとりさまの実情を教えてくれた

    叔母は老後の準備をできないまま定年まで働き、1人で年金生活を送り、親戚とは疎遠、友人関係なんて私達夫婦には知る由もありません。社会情勢の変化で公的保障だけでは生活できないことを知りました。

    私の住む川崎市は、戦前戦後に移り住んだ世代が高齢者となり、おひとりさまが増えています。叔母のように経済的にゆとりのない高齢者も多く、金銭のかかる成年後見制度や死後事務委任契約が困難な方が多いのも事実です。

    多死社会に向け、家族や地域住民、行政が協力し早急な支援策が必要です。

    川崎市の場合、平成27年度の死亡者数10,571名で冬期は死亡者数が多く、火葬場が1週間待ちでした。年々死亡者数は増加傾向にあり、火葬場混雑と遺体保管場所の確保も困難になりつつあるようです。

    身寄りのない人が死亡した場合はどうなるか

    身寄りのない場合は、「行旅病人及行旅死亡人取扱法(こうりょびょうにんおよびこうりょしぼうにんとりあつかいほう)」により、役所が火葬や遺骨保管を行い、その費用は税金から支払われます。

    賃貸アパートなどは、連帯保証人もしくは大家が自宅片づけの費用を負担することになり、相続人へ請求が行くこともあるようです。これから多死社会を迎え、個人が責任を持たないのであれば親族負担や税金負担がさらに増えるでしょう。

    どうして私達夫婦が叔母の支援ができたか?

    私達夫婦も他の甥や姪のように「関係ない」と関わりを拒否できたかもしれませんが、仕事柄、多職種協働で問題解決しているので、最後まで関われたのだと思います。叔母の看取りで、教えられたことがたくさんありました。私達夫婦が健康で、病院関係者や職場のケアマネジャー、役所の方々、住職、葬儀屋、銀行や郵便局職員、親族協力もあって、人は人によって支えられていることを実感いたしました。

    甥や姪の立場からできること

    核家族化が進み、みなさんにも同じことが起こるかもしれません。叔母が資産や負債を抱えている場合は、相続対象になる親族間の話し合いはもちろん、弁護士などの専門職種への相談が必要になります。みなさんも情報収集と相談相手を作っておくと良いでしょう。

    原田 喜代乃

    原田 喜代乃(はらだ・きよの)

    訪問看護師

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