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つながりを生むデイサービス 「タガヤセ大蔵」プロジェクト

つながりを生むデイサービス 「タガヤセ大蔵」プロジェクト

6/24(火)・25(水)に東京ビックサイトで開催された「賃貸住宅フェア2014」で、とても興味深いプロジェクトのセミナーを聞いてきました。
そのプロジェクト名は「タガヤセ大蔵」。リーフレットには、「デイサービス+αの寄合所。地域の人・モノ・コトを耕して、支え合う芽が伸びる場所」とあり、「タガヤセ」は「耕せ」が由来のようです。
概要は築30年の木賃アパート(民間経営の木造の賃貸アパート)の1階を、認知症カフェや図書館を備えたデイサービス(通所介護)施設に改修するというものです。

「タガヤセ大蔵」が生まれた背景

「タガヤセ大蔵」はプロジェクト自体はもちろん、それが具体化するまでの過程もとても興味深いものでした。「タガヤセ大蔵」の舞台となる2階建て木賃アパートは、現在のオーナーである安藤氏が祖父より引き継いだものです。築30年で最寄駅より徒歩30分という条件から、近年は空室が増え、その対策として家賃を下げたり、スタイリッシュな空間にリフォームしたりと試みましたが、改善されませんでした。
そのような状況下で祖父が体調を崩し、入院そしてリハビリ生活となり、安藤氏は祖父のために様々な高齢者施設や在宅サービスの情報収集をしていきます。安藤氏はまだ30代、この時点で初めて日本の高齢者対策の現実を知ることになります。そこで安藤氏は、祖父のためだけではなく、30代の自分が年を重ねた時に利用してみたいと思える施設を、今作ろうと思い立ちます。そこから建築家の天野氏(アトリエE03代表取締役)、社会福祉法人大三島育徳会の田中氏と出会い、「タガヤセ大蔵」プロジェクトが進んでいくことになりました。

「タガヤセ大蔵」は地域の寄合所

世田谷区の高齢化率(65歳以上の人口比率)は18.6%と、全国平均の23%よりは下回っていますが、「タガヤセ大蔵」の近くにある公社大蔵住宅(通称:大蔵団地)の高齢化率は約45%となっているそうです。そのような背景から、この「タガヤセ大蔵」は近隣の高齢者を初めとして、お子さんやお父さん、お母さん、ボランティアの方など地域住民の多世代交流ができる場を提供することになりました。
「タガヤセ大蔵」の中には、デイサービススペース、カフェコーナー、図書コーナー、ショップコーナー、料理教室もできる大きなキッチンスペースなどが盛り込まれています。またデイサービス利用者用エントランスは駐車場側に設け、あえて階段が計画されています。これはバリアフリー化をほどほどにするという考えに基づいているそうです。地域住人用のエントランスは道路側にあり、地域に開かれた設計になっています。
話を聞いていると、デイサービスという概念を超え、地域の寄合所といった印象がより強くなり、今年9月のオープンがますます楽しみになります。

2025年問題への布石に

この「タガヤセ大蔵」プロジェクトには、これからの日本の住まいと暮らしの問題解決のヒントがたくさん盛り込まれています。空き家・空室対策、少子高齢化対策、住宅ストック活用、住宅の耐震改修促進などなど。そしてこのプロジェクトは、世田谷区の「世田谷区らしい空き家等地域貢献活用モデル」に選定され、助成金を受けることが決まりました。
団塊世代が後期高齢者になる2025年問題まであと10年。現状のままではデイサービス(通所介護)やデイケア(通所リハビリ)などの在宅サービスが、足りなくなるのは周知の事実です。「タガヤセ大蔵」プロジェクトがモデルケースとなり、高齢者専用の場ではなく多世代交流の場としての施設が増えていくことを期待したいと思います。

阿比留美和

阿比留 美和 (あびる みわ)

一級建築士

住宅メーカーと設計事務所で専用住宅や併用住宅、共同住宅などの設計業務を行った後、その経験を生かしてリビング・デザインセンターOZONE(OZONE住まいづくり相談)で、終の棲家やバリアフリー住宅についてを含む、住まい づくり全般の相談に対して、中立的な立場からアドバイスを行う。

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